整形外科の月次管理は「売上の分解」から ― 新患とリピーター、どちらが足りない?
- 7月10日
- 読了時間: 5分
更新日:3 時間前
「今月は患者数が少なかったから、売上も下がった」。「今月は忙しかったから、売上もよかった」。
院長の肌感覚も重要ではありますが、サポートさせていただく会計事務所の立場からすると、もう少し踏み込んだ数字の整理が必要であると考えております。
理由は、売上を「ひとかたまり」で見ているだけでは、それに対する対応策の検討や改善ができないためです。分解して見ると、どこを直せばいいかがはっきりします。整形外科の売上は、大きく3つの角度に分けられます。順番に見ていきましょう。
この記事のポイント ● 売上は「患者数 × 来院頻度 × 診療単価」に分解して見る ● 患者数が弱いときは「新患整形外科の月次管理は「売上の分解」から ― 新患とリピーター、どちらが足りない?」か「リピーター」かを切り分ける ● 単価が弱いときは加算・計画書の取り漏れを拾う
① まず売上を「種類」と「因数」で分解する
整形外科の売上は、保険診療だけではありません。医療保険(社保・国保)に加えて、交通事故の自賠責、仕事中のけがの労災、そして自費があります。自賠・労災は単価が高く、入金の時期も保険とは違います。まずは収入を「種類」で分け、それぞれが前年よりどう動いたかを見ます。毎月の月次レポートでも、社保・国保・自賠・労災・自費に分けて把握できます。
なお自費は消費税の課税売上になるため、自費リハや物販が伸びてきたら消費税の負担が変わることもあります。早めに顧問税理士と確認しておくと安心です。
そのうえで、いちばん大きい保険診療を「因数」に分けます。
基本的には下記に分解します。
保険の売上(点数ベース)= レセ件数(実際の患者数のイメージです)× レセ単価。
さらにレセ単価は、来院頻度 × 診療単価(1来院当たりの単価)に分解できます。
つまり、保険売上 = 患者数 × 来院頻度 × 診療単価。
この因数のどれが動いたのかを見るのが第一歩です。そのほかの自賠責や労災、自費なども、患者数×単価に分解して、管理することが望ましいです。
たとえば、こんな月があります(例・試算/保険診療分)。
指標 | 当月 | 前年同月 |
レセ件数(月の実患者数) | 620件 | 600件 |
来院頻度(1人・月あたり) | 2.7回 | 3.0回 |
1日あたり患者数(延べ・22日換算) | 約76人 | 約82人 |
レセ単価(1人・月あたり) | 9,450円 | 10,500円 |
月商(点数ベース) | 約586万円 | 約630万円 |
実患者数は20件増えているのに、売上は約44万円減っています。しかも、1日あたりの来院数はむしろ約82人から約76人へ減っています。実人数は増えたのに、1人が通ってくれる回数(来院頻度)が3.0回から2.7回に落ちたためです(1回あたりの診療単価は3,500円前後で横ばい)。頭数だけ見ていると気づけない変化ではないでしょうか。ここまで分解して、はじめて対応策が検討できます。
② 患者数が弱いなら ―「新患」か「リピーター」かを切り分ける
患者数(レセ件数)は、新患 + 再来(リピーター)に分けて考えます。同じ「患者数が少ない」でも、原因が新患かリピーターかで、やることは正反対になります。
新患が減っているなら、認知と紹介の問題です。看板やホームページ、Googleの地図で見つけてもらえているか。近隣の内科や整骨院、地域の連携先からの紹介を受け入れられるようにしているか。初診の予約が取りにくくて、取りこぼしていないか。ここは「入口」を広げる施策です。
一方、リピーターが減って来院頻度が下がっているなら、続けてもらう工夫の問題です。整形外科はリハビリがあるぶん、他科より来院頻度が高く、2.5〜4回程度が一つの目安とされます。ここが落ちているなら、リハビリを途中でやめてしまう人が増えている可能性があります。次回予約をその場で取る、通院の意義を伝える、担当者ごとに離脱の傾向を見て声かけを変える。こうした「続ける」施策が効きます。
「新患は来ているが続かない」のか、「そもそも新患が来ていない」のか。前者なら院内のオペレーション、後者なら広告や紹介にお金と手間をかける。切り分けないまま広告を増やしても、効果的に資金を使うことはできません。
③ 単価が弱いなら ― 取り忘れている点数を拾う
最後は単価です。診療単価・レセ単価が前年同月より低いなら、まず疑うのは「取りこぼし」です。リハビリテーションの計画書に関する評価料、各種加算、初診・再診の扱いは、日々の忙しさで算定が漏れやすく、そのまま利益の穴になります。
目安になるのが、地方厚生局が公表している診療科別の平均点数です。自院のレセ単価が平均より低ければ、算定漏れか、単価設定に改善の余地があるサインです。あわせて、自費(予防接種・健診)や、単価の高い自賠・労災の構成も確認します。
大切なのは、増患より先に「いまの患者数で取り切る」ことです。新しい患者を増やすには広告費も手間もかかりますが、取り忘れを拾うのは、いまいる患者からの増収で、コストがほとんどかかりません。一番早く、確実な一手です。
まとめ
「患者数が少ない」で止めないこと。売上をまず種類(保険・自賠・労災・自費)で分け、いちばん大きい保険は、患者数(=新患+リピーター)× 来院頻度 × 診療単価に分解して、どの因数が落ちたのかを見る。そのうえで、弱った場所に合った手を打つ。新患が足りないのか、続いていないのか、取り切れていないのか。ここが分かれば、限られた時間とお金を、効く場所に集中できます。これが、月次を「見て終わり」にしないコツです。
執筆者:税理士 鈴木貴之(東京税理士会 上野支部・登録番号 第147721号)
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顧問先には毎月、患者数・来院頻度・単価に分解した月次レポートをお渡しし、新患とリピーターのどちらが弱いかまで一緒に見ています。ご自身のクリニックの数字を、一度分解してみませんか。まずはお気軽にご相談ください。
※本記事は2026年7月時点の情報です。


