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一般社団法人でクリニック・病院を運営している方へ|令和9年度から「決算届」が始まります

  • 4 日前
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更新日:1 日前

 医療法人ではなく、一般社団法人で病院やクリニックを運営している――。登記だけで設立できる手軽さから、この形を選んだ先も少なくないのではないでしょうか。その一般社団法人に、来年から新しい事務負担が加わります。

 医療法人と同じような「決算届(事業報告書等の届出)」の義務です。厚生労働省は2026年7月31日、その様式と、都道府県がチェックするポイントを示す通知を出しました。何が、いつから求められるのかを整理します。


この記事のポイント ● 一般社団法人(公益社団法人を除く)で医療機関を運営していると、令和8年4月1日以後に始まる会計年度から、事業報告書等の決算届が必要になります。 ● 事業報告書では役員・管理者・兼務関係を記載し、関係事業者取引は計算書類の注記や追加資料等から確認されます。 ● 確認の対象は今の取引です。届出直前ではなく、区分経理・関係事業者取引・役員の確認を今から整えておきましょう。

① いつから・何を出すのか

 医療法施行令などの改正で、病院またはクリニックを開設する一般社団法人(公益社団法人を除く)に、事業報告書等を都道府県知事等の所管行政庁へ届け出る手続きが新設されました。

 改正後の制度は、令和8年4月1日以後に開始する会計年度から適用されます。例えば3月決算の法人であれば、令和8年4月1日から令和9年3月31日までの会計年度が最初の対象です。届出はその会計年度の終了後3か月以内なので、多くの法人にとって令和9年度が最初の提出になります。決算月によって最初に対象となる会計年度が変わる点に注意してください。

 届け出る書類は、何種類かあります。位置づけを整理すると次のとおりです。

区分

主な書類

毎年度、提出必要

事業報告書/貸借対照表/損益計算書(医業に係る事業・医業に関連する業務・それら以外の事業を区分して表示)

一定規模以上の法人のみ提出必要

附属明細書(直近会計年度の負債総額50億円以上、または事業収益総額70億円以上の場合)。重要な会計方針等の記載、貸借対照表等に関する注記、有形固定資産等明細表、事業費用明細表 など

毎年度の提出の対象外(所管行政庁が非営利性の確認のため、必要に応じて提出を求めることがある)

関係事業者との取引の状況に関する報告書/財産目録/純資産変動計算書/監査報告書(法人が作成している場合)

 つまり、財産目録や監査報告書まで毎年必ず出すわけではありません。まずは事業報告書と貸借対照表・損益計算書が基本、と押さえておけば十分です。なお、既存の医療機関については、令和9年度の立入検査や変更届の状況により、事業報告書等とあわせて、確認ポイントに適合した定款等の提出を求められる場合があります。


② 事業報告書と計算書類等から確認されること

 今回の届出で、行政は事業報告書と計算書類等から医療機関の非営利性を確認します。書類ごとに役割が分かれているので、混同しないよう整理します。

 

 事業報告書では、役員・管理者・兼務関係などを記載します。 一般社団法人の役員の氏名を記載し、開設する医療機関の管理者は理事に加えたうえで、役員欄に氏名を記載するとともに、備考欄に管理者である旨を記載します。役員が営利企業の役職を兼務している場合には、その企業名と役職も記載します。このほか、医業に係る業務、医業に関連する業務、それら以外の業務や、社員総会で議決・同意した事項などを記載します。なお、一定の医療法人では役員欄を省略できる取扱いがありますが、今回示された一般社団法人の事業報告書には、そのような省略規定は設けられていません。

 

 役員の兼務は、原則としてないことが確認されます。 医療機関の開設・経営上、利害関係のある営利法人等(いわゆるMS法人など)との役職員の兼務は、原則としてないことが前提です。兼務がある場合には、医療機関の非営利性に影響を与えない関係・取引規模であるかが、計算書類や必要に応じて提出を求められる資料等から確認されます。

 

 関係事業者との取引は、事業報告書ではなく、附属明細書の注記や追加資料等から確認されます。 一定規模以上の法人では、毎年度の届出対象となる附属明細書の様式4-1「貸借対照表等に関する注記」に、関係事業者との関係、取引内容・金額・取引条件、債権債務の期末残高等を記載します。また、法人の規模にかかわらず、所管行政庁から必要に応じて様式5-1「関係事業者との取引の状況に関する報告書」の提出を求められる場合があります。

 様式4-1と様式5-1の対象となる関係事業者や金額基準は取引類型ごとに異なり、例えば事業収益または事業費用に係る取引は、1,000万円以上で、かつ対応する事業収益総額または事業費用総額の10%以上である場合が対象です。

 一方、様式5-2「財産目録」のうち「法人の関係者等からの借用物件の明細」には、この関係事業者取引の金額基準は設けられていません。該当する借用物件がある場合には、賃借料の多寡にかかわらず、極端にいえば1円であっても記載対象になります。ただし、財産目録は毎年度の定例届出書類ではなく、所管行政庁が必要に応じて追加提出を求める書類です。ここでいう「任意提出」は法人が自由に提出を拒めるという意味ではなく、所管行政庁から提出を求められた場合には、その内容を記載して提出する必要があります。

 MS法人やオーナー等との取引や借用物件がある場合には、様式4-1・様式5-1の金額基準に該当するかだけでなく、財産目録の借用物件明細への記載が必要となる可能性も含めて確認しておくことが重要です。

 

 事業報告書の「その他」欄は任意欄です。 工事、医療機器の購入・リース契約、診療科の新設・廃止等を記載する欄で、記載内容は非営利性の確認資料となります。事実関係や契約内容を整理したうえで対応することが大切です。

 

 この届出は、決算書を提出して終わる手続きではなく、医療機関の非営利性を継続的に確認するための制度です。非営利性が徹底されていないと判断された場合には、改善措置命令または業務停止命令の対象となる可能性があります。さらに、これらの命令に違反した場合には、開設許可の取消しや閉鎖命令につながる可能性があります。


③ 今から準備しておきたいこと

 すでに対象会計年度が始まっている法人では、現在の会計処理や取引が、今後の届出・確認につながっていきます。届出直前ではなく、いまの段階で次の4点を点検しておくと安心です。

3区分での区分経理:損益計算書を「医業に係る事業」「医業に関連する業務」「それら以外の事業」の3区分で表示できる帳簿の作り方にしておく

関係事業者取引の確認と整理:人的・支配関係のある者との取引が、取引類型ごとの金額基準に該当するかを確認する。賃料・委託料の金額の合理性や必要性を、契約書や相場との比較で説明できるようにしておく

役員・管理者・兼務の確認:開設する医療機関の管理者を理事に加え、役員欄・備考欄に記載しているか、役員が利害関係のある営利法人の役職員を兼務していないかを確認しておく

附属明細書・追加資料への対応:附属明細書の届出対象(負債総額50億円以上、または事業収益総額70億円以上)に該当するかを確認する。財産目録や取引状況報告書等について所管行政庁から提出を求められた場合に備え、取引明細や契約書などの基礎資料を整理しておく

 特に、一般社団法人とMS法人を組み合わせている、オーナー所有の不動産を賃借している、関係者へ委託料を払っている――こうしたケースでは、金額の合理性を説明できる資料や契約関係を今から整理しておくことが実務上のポイントです。



まとめ

 一般社団法人で医療機関を運営している場合、令和8年4月1日以後に始まる会計年度から、事業報告書等の決算届が必要になります。ポイントは、事業報告書での役員・管理者・兼務関係の記載と、計算書類の注記・追加資料で確認される関係事業者取引です。一般社団法人であっても、医療機関を運営する以上、非営利性や取引の適正性を継続的に説明できる管理体制が、これまで以上に重要になります。区分経理・関係事業者取引・役員の確認を、いまのうちに一度整えておきましょう。作成には税理士の関与が効くところですので、ご不安があれば決算を迎える前にお声がけください。


執筆者:税理士 鈴木貴之(東京税理士会 上野支部・登録番号 第147721号)


参考文献

厚生労働省「一般社団法人が開設する医療機関の非営利性の確認のポイント及び医療機関を開設する一般社団法人が届け出なければならない計算書類等の様式等」(医政総発0731第2号・医政支発0731第3号、令和8年7月31日)[PDF]:https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/511416.pdf


本記事は2026年8月時点の情報です。制度の詳細は、上記の厚生労働省通知および各都道府県の案内をご確認ください。

 
 

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