スタッフ給与を上げても黒字を保つ ― 賃上げの「原資」は3つある
- 7月28日
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更新日:3 時間前
「スタッフの給与を上げてあげたい。でも、上げたら赤字にならないか」。2026年の改定で賃上げが求められるなか、院長先生からいちばん多くいただく悩みです。
従業員の賃上げは、一義的にはコストの増加になります。また、基本給を上げたら、なかなか下げにくいという側面もあります。しかし、クリニックには、賃上げの財源が実は3つ用意されています。順番に取りに行けば、給与を上げても、ある程度の利益は保つことが可能です。ただし社会保険料の事業主負担も増えるので、ここは留意が必要です。
この記事のポイント ● 賃上げの原資は「改定の評価料・賃上げ税制・助成金」の3つ ● ただし給与を上げると社会保険料の事業主負担(約15%)も増える ● 「いくら戻り、いくら増えるか」を比較して上げ幅を決める
① 原資は改定で配られている ― ベースアップ評価料を取り切る
2026年6月の改定で、外来・在宅のベースアップ評価料(Ⅰ)が大きく増えました。初診は6点から、継続して賃上げをする上位区分で23点、再診は2点から6点へ。外来の多い医院なら、毎月数万円単位の収入増になります。医療機関で賃上げを行う場合には、原則これを活用することが前提となっております。留意すべき点は2つあります。実際に賃上げをしないと算定できないこと、そして届出の期限があることです。本評価料は、賃上げの原資として使うという制約があることをご確認ください。
賞与で配ってもダメ ― 基本給で上げる ● ベースアップ評価料は「基本給(または毎月決まって支払われる手当)の引上げ=ベア」で賃金改善を判定します。賞与を増やすだけでは要件を満たせません。 ● 基本給で上げれば、それに伴って増える賞与や社会保険料も「評価料を全額賃上げに充てた」計算に含められます。 ● なお対象職員は常勤換算で数えるので、パート中心の医院でも算定できます(院長など経営者・役員は対象外)。
② 上げた分は税金で取り戻す ― 賃上げ促進税制
給与を前年より増やすと、その増加額の一部が税額控除になります。一般的なクリニックの規模の医療法人であれば、最大で給与増加額の35%が税額控除の対象となります。個人開業のクリニックも同じく対象です。こちらは法人税ではなく所得税からの控除になりますが、「前年より増やした給与の一定割合を税金から差し引ける」という考え方は変わりません。赤字で使い切れなくても5年間の繰越ができます。注意が2つあります。開業初年度(法人は設立第1期、個人は開業した年)は前年と比べられないため使えません。対象は2期目以降です。そして確定申告書に書かないと適用できないこと。顧問の税理士の先生によくご確認いただき、進めてください。
③ 設備や正社員化に絡めて助成金 ― 業務改善助成金など
最低賃金を引き上げつつ設備投資もするなら、業務改善助成金(設備等に最大600万円。令和8年度は2026年9月1日から受付)が使えます。パート職員を正社員にするならキャリアアップ助成金も対象です。一時期に比べ、補助金の数は減少傾向ではありますが、貴院に適用できる補助金・助成金がないか、引き続きご確認いただければと思います。
まとめ
賃上げで黒字を保つコツは、顧問の税理士の先生とよくご相談いただくことです。当然、給与を上げると社会保険料の事業主負担(給与の約15%)も増えます。なので、増加分がどれだけ税制・評価料でカバーできるかを試算してください。そうして初めて「いくらまで上げられるか」が見えてきます。まずは今年の昇給予定で、この差引を試算してみることをおすすめします。
執筆者:税理士 鈴木貴之(東京税理士会 上野支部・登録番号 第147721号)
本記事は2026年7月時点の情報です。


