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2026診療報酬改定で、院長の手取りはこう動く【試算】

  • 7月7日
  • 読了時間: 4分

更新日:1 日前

「点数は上がったらしいけど、うちの手取りは本当に増えるの?」。2026年6月の診療報酬改定について、院長先生からよくいただく質問です。先に結論をお伝えすると、額面は上がっても、院長の手元に残るお金はあまり増えません。何も手を打たなければ、むしろ減ることもあります。

今回の改定率は本体で+3.09%。数字だけ見ると、大きく増えるように思えます。ただ、その増えた分が何に使われるお金なのかを見ていくと、話は変わってきます。


この記事のポイント ● 増えた点数の多くは、スタッフの賃上げに使うベースアップ評価料 ● それを除くと、院長の取り分は初診でむしろマイナス、再診でもわずかな増加 ● 手取りを増やすには、加算の取り漏れと役員報酬の決め方、まず2つを確認する

① +3.09%の中身は、ほとんどがスタッフの賃上げ分

本体+3.09%(令和8年度+2.41%、令和9年度+3.77%の平均)のうち、+1.70%は賃上げのための分です。外来で増える点数も、その多くは「ベースアップ評価料」という加算が占めます。名前のとおり、看護師や事務スタッフの給与を上げるためのお金です。そのまま利益になるわけではなく、実際に賃上げをして初めて使えるお金だと考えてください。


② 賃上げ分を引くと、初診はマイナスになることも

では、この賃上げ分を除くと、院長の取り分はどう変わるのでしょうか。クリニックで件数の多い初診と、生活習慣病の再診を例に試算してみました。

区分(1回あたり)

額面(改定前→後)

ベースアップ評価料を除くと

初診の患者

483点 → 495点(+12点)

476点 → 472点(▲4点)

生活習慣病の再診

486点 → 491点(+5点)

484点 → 486点(+2点)

※電子的診療情報連携体制加算などの算定状況による試算。点数は2026年6月時点。

額面ではたしかにプラスです。ところが賃上げ分のベースアップ評価料を除くと、初診はマイナス、再診もごくわずかな増加にしかなりません。点数は上がったのに経営が楽にならない、という感覚の理由はここにあります。

そのいちばんの理由が、差し引いたベースアップ評価料そのものの引き上げです。

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)

改定前

改定後

初診時

6点

23点

再診時

2点

6点

※改定後は継続的な賃上げを行う上位区分の場合(通常区分は初診17点・再診4点)。

増えた点数の多くは、この評価料が膨らんだ分です。これはスタッフの賃上げに回すお金ですから、差し引くと院長の手元にはほとんど残らない、ということになります。


③ 手取りを増やすには、まず2つを確認する

 増えにくい改定ですが、手取りを増やす方法はあります。まずは、次の2つを確認してみてください。

 1つ目は、加算の取り漏れです。 実際にやっているのに算定していない加算は、思いのほか多くあります。夜間に電話対応をしているのに時間外対応体制加算を届け出ていない。かかりつけ医として継続的に診ているのに地域包括診療加算を算定していない(2026年から対象になる患者が広がりました)。糖尿病の患者さんを眼科や歯科に紹介しているのに、連携強化加算(各60点)を取っていない。こうした取りこぼしを拾うだけで、再診1回で30点以上変わることもあります。反対に、注意したい変化もあります。医療情報取得加算と医療DX推進体制整備加算は、2026年6月に「電子的診療情報連携体制整備加算」へ一本化され、マイナ保険証の利用率などの要件が変わりました。古い届出のままでは算定できないことがあります。機能強化加算もBCP(業務継続計画)をつくっていないと算定できなくなる見込みで、一般名処方加算2は8点から6点に下がります。気づかないうちに減っていた、ということも起こります。

 2つ目は、役員報酬の決め方です。基本は、実際に仕事を担うご家族を役員にして、所得を分け合う方法です。毎月の報酬を抑えて賞与(事前確定届出給与)に寄せ、社会保険料を軽くするやり方もありますが、これは慎重に進める必要があります。事前確定届出給与は、税務署へ届け出たとおりの金額・時期で支給しないと、その賞与が全額、経費(損金)として認められません。届出と1円でも違えば全額が損金不算入です。社会保険料を下げれば、将来の年金や遺族・障害年金、役員退職金の適正額まで小さくなりますし、極端な設計は年金事務所から是正を求められることもあります。目先の負担だけで決めず、専門家と確認しながら進めるべきところです。


まとめ

 2026年の改定で手取りが増えるかどうかは、改定率そのものより、自院がどこまで手を動かしたかで決まります。算定の見直しと、役員報酬や社会保険の設計。この両方をあわせて、はじめて院長の取り分が変わってきます。まずは、よく算定する初診と再診について、賃上げ分を除いた実際の取り分で並べてみることをおすすめします。



執筆者:税理士 鈴木貴之(東京税理士会 上野支部・登録番号 第147721号)


本記事は2026年7月時点の情報です。

出典:令和8年度診療報酬改定について(厚生労働省)、令和8年度診療報酬改定(中央社会保険医療協議会 答申)、ベースアップ評価料等について(厚生労働省)。具体的な点数・施設基準は告示・疑義解釈で変わる場合があり、個別の算定はレセプト内容に基づく確認が必要です。本文の試算は当事務所による概算です。

 
 

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